対談　遠藤周作

1：さとみ :
2024/04/28 (Sun) 10:16:09
host:112.169.201.84: https://bbs10.fc2.com//bbs/img/_493800/493722/full/493722_1714266969.jpg ※投稿が長くなるので、別投稿にさせていただきました。

「狐狸庵ぐうたら怠談」その４

◆歌の心

美空　先生ご存じですか。私とソックリな子が出てきちゃったのを。

遠藤　物まね？

美空　気持ちわるいんです。ラジオから名前を言わずに流したら、本当に私だと思うらしいんです。それが可愛い顔した男の子。

遠藤　ぼくも竹中君っていうソックリな俳優があらわれた…よく似ているよ。

美空　でもあまり似てると気持ちがわるい。それでも男ですから、どうなってるか心配。

遠藤　男？（笑って）なるほど。

美空　その子が可哀想なのは、プロの歌い手として出てきたことです。素人だったのが物まねで見込まれて……。そしたら、歌があまり売れないそうなんです。なぜ売れないかというと、私に似すぎているから。それにまだ美空ひばりが生きているし。

遠藤　俺のほうは竹中君が売れているよ。

美空　だけど似てると思いますか。私は似てないと思う、あの竹中さん。

遠藤　シュンカン的に似ているよ。ところで君のその声は天性のものなの、それとも……。本なんか読むと、あきれたボーイズの川田さんから勉強したとか。

美空　昔の声を聴くと、笠置シヅ子さんの物マネから出ましたね。だからその声が少し残っています。「悲しき口笛」あたりは自分のものに出来上がってない。だんだん歌ってきて、そうですねえ「涙の紅バラ」くらいからちょっと私のものが出てきた。

遠藤　ひばり節ね。

美空　そして色気が出た歌い方になったのが「悲しい酒」あたりからかな。

遠藤　あれは何年でしたか。

美空　昭和四十一年です。

遠藤　それからはやはり齢と共に変わりますか。

美空　この頃はねばりすぎるって言われる。

遠藤　どういうことですか。

美空　感情的にもいろんなことが分かって言っちゃったからかな。なにかねっとりした……。

遠藤　相撲の人との恋愛まで入ってくるわけだ。

美空　また先生、決めないで下さいな。歌が変わったといえば、「悲しい酒」も一番はじめに入れたものと、一番最後に入れたものではずいぶん違っています。やっぱりねちっこくなっていて。あの歌は不思議なことに、舞台などでたとえばワンコーラスだけ長く延ばして歌おうとすれば、いくらも長くできるんです。

遠藤　自分をいちばん出せるというのは、どういう歌ですか。

美空　いまは女心を歌いたいんです。先生がさきほどからおっしゃっているような。恋愛しているんだろうおまえ、という……。

遠藤　へえ。

美空　そういう中で、強くはみえても所詮は弱い女の部分を、せめてせめて歌であらわしてもらいたい。

遠藤　いかしあなたのお母さんは、逆境にあっても決してくじけぬ美空ひばりというのを出そうとしておられたがねえ。

美空　いままで強い女ばかりやってきましたから、私はそればかりだと今はちょっと不満なんです。本当は寂しいんですから。その寂しさが出るような、それで「悲しい酒」に負けないような、そういう歌をうたうことができれば……。

遠藤　よし、ぼくが作詞して美空ひばりに歌ってもらおう。その女心を。これはヒットするぞ。

美空　よろしくお願いいたします。でもいやですよ、歌詞のなかに相撲とりが出てきたり……。

遠藤　あいつを棄てて俺へ走ってこいとか。

（『夕刊フジ』昭和59年5月11日付）

※投稿画像はイメージです。
2：鴛鴦 : 2024/04/28 (Sun) 12:32:17 host:*.au-net.ne.jp: 篝たえきさんのお話しですね
3：さとみ :
2024/04/28 (Sun) 16:29:55
host:1.235.221.58: https://bbs10.fc2.com//bbs/img/_493800/493722/full/493722_1714289395.jpg 鴛鴦様

そうですね。
番組の最後にひばりさんは「芸能界っていうのは本当に恐ろしいところだと思う。私のモノマネをしてた素人さんが、今度はスターになって出てきたのだから、恐ろしい世の中だ。うっかりしてはいられない」とコメントされていました。

投稿画像は、日本テレビ「歌まね振りまねスターに挑戦」より（1983年11月25日放送）

対談 遠藤周作

対談　遠藤周作